Trial of Upadacitinib or Abatacept in Rheumatoid Arthritis RAに対するUPAとABTの効果を比較
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2008250
なぜこの2剤を比較したのか真意は測りかねますが、Head to Headの論文ということで読んでみました。JAK阻害薬はTOFを皮切りに次々と発売されていますが、Upadacitinibは国内4つめに発売されたJAK阻害薬です。以前に投稿したJAK阻害薬のまとめで触れたように、国内5つめとなるJAK阻害薬が厚生労働省から製造販売承認を受けたことが2020/9/25発表されました。5つめのJAK阻害薬 フィルゴチニブ(商品名:ジセレカ)もUPA同様JAK1を選択的に阻害するようですが、UPAとはどう差別化を図るのでしょうか・・・併用注意薬や代謝経路に違いがあるようですが、続報を待ちたいところです。
Introduction:Upadacitinib(UPA)はJAK2、JAK3、およびTyk2よりもJAK1に選択性がある。UPA使用前の治療内容に関わらず、患者の約30%で寛解を示したと報告されている。
Abatacept(ABT)は抗原提示細胞とT細胞間のCD86/80とCD28による共刺激シグナルを阻害し、T細胞の活性化や下流の炎症性サイトカイン産生を抑制する。アバタセプトの有効性と安全性は、活動性関節リウマチの患者を対象とした第3相試験で示されている。
Methods
Patients:
2010 ACR/EULARの関節リウマチ分類基準を満たして関節リウマチと診断され、少なくとも3ヶ月以上経過している18歳以上の患者をrecruitした。
患者は中等度から重度の活動性(SJC≧6/66, TJC≧6/68かつCRP≧3mg/lと定義)を有し、少なくとも1つのbDMARDsで少なくとも3ヶ月以上治療されている、もしくは少なくとも1つのbDMARDsで許容できない副作用を経験していた。
プロトコルでは、患者は従来のcsDMARDを少なくとも3か月間投与され、entry前に少なくとも4週間は最大2つのcsDMARDを安定して服用していなければならなかった。
JAK阻害剤またはABTを以前に使用したことがある患者、関節リウマチ以外の炎症性関節疾患の患者は除外した。
Trial design:
28か国の120の施設で、ランダム化二重盲検第3相実薬対照試験を実施した。患者は1:1の比率でランダムに割り当てられ、UPA:15mg/day poまたはABT(体重60kg未満:500mg、60-100kg:750mg、> 100 kg:1000mg) を1日目と2、4、8、12、16、20週目に投与に静注する群に分けた。
UPA群の患者はプラセボの静注を受け、ABT群の患者も経口のプラセボ薬の投与を受けた。
すべてのbDMARDはウォッシュアウト期間を考慮して中止されている必要があり、試験中はbDMARDの使用は禁止されていた。csDMARD、NDAIDs、アセトアミノフェン、または経口/吸入グルココルチコイドの継続は許可されていた。12週目から、2回の受診連続でベースラインと比較してTJCとSJCの両方で少なくとも20%の減少がなかった患者は、もともと内服していた薬剤を調整または追加された。
Trial oversight:この試験はAbbVieがデザインした。
End points:
Primary endpointsは、ベースラインから12週目のDAS28-CRPの変化であり、ABTに対するUPAの非劣性についてテストした。DAS28-CRPと疾患活動性については以下のように定義した。
・2.6≦DAS28-CRP<3.2:低疾患活動性
・3.2≦DAS28-CRP≦5.1:中疾患活動性
・5.1<DAS-28CRP:高疾患活動性
Key secondary endpointsは、DAS28-CRPのベースラインからの変化におけるABTに対するUPAの優位性と、DAS28-CRP<2.6で定義される臨床的寛解に至る患者の割合におけるUPAの優位性を示すことだった。
Results
Patients:
2017年5月~2019年9月まで、合計613人の患者が無作為化を受け、 612人は治験薬を少なくとも1回投与された(UPA:303人、ABT:309人)。患者の約90%が24週間の試験を完遂した。
ベースラインの人口統計学的特徴、疾患活動性等は2つのグループで差がなかった。
Efficacy(Primary and key secondary end points):
baseline平均DAS28-CRP UPA群:で5.70、ABT群:で5.88 (P<0.001)
baseline→12週目のDAS28-CRP平均変化 UPA群:-2.52ポイント, ABT群:-2.00ポイント (P<0.001)
DAS28-CRP<2.6の患者の割合 UPA群:30.0%、ABT群:13.3% (P<0.001)
Baseline→12週目のCRP平均変化 UPA群:-12.34mg/l、ABT:-7.13mg/l
Safety:
24週間の試験期間を通して、重篤な有害事象、治験薬の中止につながる有害事象、および重篤な有害事象の発生率は、ABTよりもUPAの方が多かった。
重篤な有害事象 UPA群:10人(3.3%)、ABT群:5人(1.6%)
重篤な感染症 UPA群:3人(1.0%)、ABT群:1人(0.3%)
日和見感染症 UPA群:4人(口腔カンジダ症:3人、食道カンジダ症:1人)
ABT群:1人(口腔カンジダ症)
帯状疱疹 UPA群:4人(1.3%)、ABT群:4人(1.3%)
(*UPA群2人、ABT群1人が帯状疱疹のため試験完遂前薬剤投与を終了した)
肝障害 UPA群:23人(7.6%)、ABT群:5人(1.6%)
脳血管障害の既往歴のあるUPA群の患者で、心血管系有害事象(脳卒中)が報告された。またUPA群で静脈血栓塞栓症が2例報告された。
ABT群よりもUPA群の方が、Hbまたはリンパ球のレベルがグレード3または4に低下した患者の割合が高かった。
UPA群でグレード3のCK増加が1例、グレード4のCK増加が2例報告された。 3人の患者はすべて無症候性であり、UPA中止には至らなかった。
Discussion:
今回の第3相試験では、従来のbDMARDsでの治療効果が不十分であった患者におけるUPAの効果をABTと比較して検討した。
UPAはcsDMARDと併用した場合、12週目のbaseline→12週目のDAS28-CRPの平均変化(-2.52対-2.00)においてABTよりも優れており、-0.52ポイント(95%CI、-0.69)の差があった。UPAは12週目にDAS28-CRP<2.6による寛解を示した患者の割合に関しても優位性を示した。
JAK阻害剤はIL-6のシグナル伝達経路に関与しており、CRPに影響を及ぼす。そのためDAS28-ESRやCDAIなどCRPが含まれていない項目でexploratory analysesを行った。
その結果、どちらもprimary endpointと同じような結果を示した。
ABTよりもUPAの方が多くの有害事象が報告された。(意外なことに)帯状疱疹感染の頻度は、2群間で違いは見られなかった。 UPAはDAS28-CRP<2.6で定義される寛解に関してはABTより優れていたが、より多くの有害事象および重篤な有害事象と関連していた。
UPAの長期的な安全性をより理解するには、より長期にわたる大規模な試験からの追加データが必要であると考えられた。
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個人的に気になる部分はDiscussionにも記載されている通り、JAKのpathwayがIL-6に関与しているためDAS28-CRPで差がついているだけのような気がしてしまうところですね・・・。TJC数やSJC数では大きな違いは見られず、CRPを含まないCDAI等の結果は明示されていないのも気になるところです。Abbvie主導の試験なので仕様がないですが。
この試験の結果もそうですが、長期的な安全性に関して気になりますので、私個人としてはfirst でJAK阻害薬を選択する事はまだまだ少なく、どうしても自己注射に同意してくれないけれど、頻回な通院は難しい患者さんの場合に選択しているのですが、今後の試験の結果次第でbDMARDsと同じくらいJAK阻害薬が使われる日が来るのでしょうか。