リウマチ膠原病 論文抄読会

リウマチ膠原病に関する論文を読んでいきます。主に知識量up目的です。初学者ですので間違いがありましたらコメントで教えて頂けると有難いです。

safety and efficacy of abatacept in early diffuse cutaneous systemic sclerosis(ASSET):強皮症に対するABTの効果

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https://www.thelancet.com/journals/lanrhe/article/PIIS2665-9913(20)30237-X/fulltext

 

Introduction:強皮症は、皮膚と臓器の炎症と線維化を特徴とする結合組織病である。

いくつかの研究は、初期のびまん性強皮症の病因として活性化T細胞が関与している可能性を示している。初期のびまん性強皮症患者の皮膚生検サンプルでは血管周囲領域への活性化T細胞とマクロファージといった炎症性物質の浸潤が多く見られる。Abatacept(ABT)は、ヒト細胞障害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)の細胞外ドメインとヒトIgGのFc部からなる融合蛋白であり、T細胞の活性化や下流の炎症性サイトカイン産生を抑制する。ABTはT細胞の活性化を低下させることに加えて、循環線維芽細胞の筋線維芽細胞または線維芽細胞への分化を防ぐことにより、その抗線維化効果を媒介する可能性がある。

びまん性強皮症の患者10人を対象とした6か月のプラセボ対照パイロット試験では、ABTの忍容性は高く、皮膚硬化の治療に使用できる可能性があることが示された。27人の患者を対象としたEUSTARの観察研究では、ABTは良好な安全性プロファイルを示し、全身性硬化症の患者の炎症性関節炎と機能を改善した。これらの臨床データを考慮して、第2相二重盲検プラセボ対照試験であるASSET試験(びまん性強皮症に対するABT皮下注射の効果の検討に関する研究)を実施した。

6か月の非盲検延長期間を含む18か月までの安全性と探索的有効性の結果について記載する。

 

Methods

Study design

・治験責任医師主導の第2相二重盲検試験 (延長試験はオープンラベル)

・カナダ、英国、米国の22ヶ所で施行

・対象となる参加者:18歳以上で2013年のACR/EULAR全身性硬化症分類基準を満たす患者
・さらなる包含基準:最初の非レイノー症状発症時から18ヶ月以内 、かつスクリーニング時のmRSSが10~35、または疾患期間が18ヶ月以上36ヶ月以下、mRSSは15~45、スクリーニングのための受診時に、過去6ヶ月間の受診と比較して疾患活動性があること。

・疾患活動性ありの定義:3単位以上のmRSSの増加、新たな1つの部位でmRSSが2以上増加すること、新たな2つの部位でmRSSが1以上増加すること、1ヶ所以上で腱摩擦音を聴取すること。

・延長試験:12ヶ月間の二重盲検試験を完了した場合、6ヶ月のオープンラベル延長試験に参加する機会が与えられた。

・12ヶ月間の試験中に3ヶ月連続で悪化した場合は、治験からは脱落した。

 

Randomisation and masking:

参加者は無作為にabataceptまたはプラセボのいずれかに1:1で割り付けられた。
無作為化は罹病期間により層別化された(≤18ヶ月 vs 18<month≦36)。 

Procedures

患者はABT:125mg sc もしくはプラセボの投与を週に1回受けた。Escape therapyは6ヶ月目で病勢が悪化している患者が対象であった。

ABT群、プラセボ群両群ともに12ヶ月の二重盲検期間を終了した参加者は、ABT:125mg scを1週間毎に6ヶ月投与するopen-label試験へと移行した。

参加者は有害事象について評価され、baselineおよび二重盲検期間の1、3、6、9、12か月目、非盲検期の14、16、および18か月目にmRSSの評価を受けた。

HAQ-DI(0〜3)、Scleroderma-HAQ(S-HAQ)、VAS、Patient-Reported Outcomes Measurement Information System (PROMIS)-29、University of California at Los Angeles Scleroderma Clinical Trial Consortium(UCLA) gastrointestinal tract(GIT)2.0と、PGA(Patients&Physician)がbaselineと3、6、12、18か月目に評価された。肺機能検査は、baselineと6、12、および18か月目に実施された。

全身性硬化症に特異的な自己抗体は、抗セントロメアの免疫蛍光法によって評価された。他の10種類の抗体は、タンパク質とRNAの免疫沈降によって評価された。

 

Outcomes:

Primary endpoint:二重盲検期間でのbaseline→12か月目のmRSSの変化

Exploratory endpoint:非盲検期間のbaseline→18か月目までのmRSS、%FVC、HAQ-DI、PGA(Patient&Physician)、およびACRCRISS、S-HAQVAS、PROMIS-29、およびUCLA GIT2.0

中等度から重度のびまん性強皮症の患者の中で、次の3つの低疾患活動性の定義を満たす参加者の割合を計算した:①mRSS :10以下、②HAQ-DI:0・75以下、および③P(Patient)GA:3以下

 

Roles of the funding source:

Bristol-Myersが薬剤とプラセボを提供したが、研究デザイン、データ収集、データ分析、データの解釈、またはレポートの作成には関与しなかった。
データはミシガン大学に集積された。著者は、研究のすべてのデータに完全にアクセスでき、最終的な責任を負っていた。

 

Results:

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期間:2014/9/22~2017/3/15

プラセボ群:44人→34人(77%)が12ヶ月の研究期間を終了→opem-labelへ移行

ABT群:44人→33人(75%)が12ヶ月の研究期間を終了→open-labelへ移行

最終的に両群ともに32人が18ヶ月の研究期間を終了

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両群間の特性に大きな差はなかった。(TJCだけ他の項目より差が大きいですが)

 

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ABT群では、mRSSのbaselineからの平均改善が12か月で(–6・6 [SD 6・4])、非盲検延長中(–9・8 [8・1])とさらに改善が認められた。
プラセボ群では、mRSSのbaselineから平均改善が12ヶ月で(–3・7 [SD 7・6])、18か月で(–6・3 [9・3])とさらに改善した。
12か月目にmRSSが5単位以上改善した参加者の割合は、ABT群:68%(23/34)、プラセボ群:50%(19/38)だった。

 

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%予測FVCは、二重盲検試験中に両方のグループで低下した。 12か月の時点で、baselineからの平均変化は、プラセボ群では–2・7%(SD 5・5)、ABT群では–1・6%(8・0)だった。

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ただし、非盲検延長期間中、両方の治療グループで予測FVCの割合が改善され、baselineから18か月目までの平均変化は小さかった(プラセボ→ABT群で–0・3%[SD 6・3]、ABT→ABT群で0・9%[9・9];図3A)

ABT群のPGAは最初は悪化し、その後二重盲検期にbaselineに戻り、ABT群の12か月目の平均スコアは0・0(SD 2・2)、プラセボ群平均スコアは–0・4(3・3)だった(図3C)。

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一般に二重盲検期間には、感染症、試験中止につながる有害事象、および重篤な有害事象はABT群よりもプラセボ群でより高頻度だった。非盲検延長では、これらの有害事象は、二重盲検期よりも両群で少なかった(表3)。
非盲検延長期間中、プラセボ→ABT群の1人の参加者で心停止を伴う心室細動、およびABT→ABT群の2回の頻脈(1人の参加者)および上気道感染症と寝汗(1人の参加者)といった有害事象が見られた。
感染はプラセボ→ABT群の9人の患者(12回)とABT→ABT群の11人の患者(14回)でopen-label中に発生し、プラセボ→ABT群の1人の患者がバルトリン腺炎を起こし、ABT→ABT群の1人の患者が蜂窩織炎を起こした(表3)。

Discussion:

二重盲検期間の感染性有害事象は、ABT→ABT群の方がプラセボ→ABT群よりも頻度が低かった。

Primary endpointであるbaseline→12か月目までのmRSSの変化は、プラセボと比較してアバタセプトで有意ではなかったが、exploratory analysesによりABTの潜在的な疾患修飾効果が示唆された。

他の臨床試験の結果と同様に、ASSET試験でも12か月目で、mRSSはプラセボ群と比較してABT群でで数値の改善を示したが、個人差があった。

両群の患者は、非盲検延長中に%FVC予測値の数値的改善を示した。さらに、ACR CRISSスコアは、プラセボ群よりもABT群で12か月目にさらに改善し、18か月目に両方のグループで継続的な改善が見られた。(Table2)

HAQ-DIとPGA(Patient&Physician)も、ABTによる非盲検治療中に両方のグループで改善した。

12か月目に低疾患活動性である患者の割合は両群間で類似していたが、open-label期間である18か月目ではプラセボ→ABT群と比較して、ABT→ABT群で2倍以上高かった。

これによりびまん性強皮症では低疾患活動性にたどりつくまでに長い治療期間が必要であることが示唆されており、他の研究でさらに検証されるべきである。

 

limitation:

open-labelの延長試験には、12か月の二重盲検期間を終了し延長試験に入った患者は、おそらく治療に対する反応性が高いか、重症度が低いため、生存者バイアスが研究結果に影響を与えた可能性がある。(つまり治療が順調に行われている患者だけが参加している)

 

%FVC予測値、mRSSが軽度改善したのみでしたね。有効な治療薬が見つかって欲しいものです・・・。