リウマチ膠原病 論文抄読会

リウマチ膠原病に関する論文を読んでいきます。主に知識量up目的です。初学者ですので間違いがありましたらコメントで教えて頂けると有難いです。

AAVにおけるCYとRTX治療による副作用発現率

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https://arthritis-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13075-021-02452-8

 

MAINRITSAN3試験の結果が出てからAAVの治療にCYよりもRTXを選択される施設も増えたかと思います。当院は地域柄もあり高齢の患者さんが多く、血球減少を来しにくいこと等副作用の観点からRTXが主流になりつつあります。体感としてはRTXの方がCYに比べて感染症発症リスクが少ないように感じますが実際のところはどうなのでしょうか?

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Backgroud:ANCA関連血管炎は死亡率や罹患率が高い膠原病の一つである。いくつかの研究でANCA関連血管炎においては重症感染症(serious infection:SI)が死亡率の増加に大きく関与していることが分かっている。そこで今回の研究ではSIの発生率、種類、リスク因子を疾患活動性や治療により比較することを目的とする。

 

Methods

Patient

参加施設:ギリシャアテネの3つの病院

方法:多施設共同後ろ向き観察研究

対象:18歳以上、GPAあるいはMPAに罹患しており改定Chapelhill分類を満たしており、寛解導入後に最低3ヶ月以上の追跡調査が行えている患者(EGPAは除外)

収集したデータ:寛解導入開始時の年齢、性別、診断日、疾患の重症度、ベースライン時の疾患活動性(BVAS)、ANCA値、臓器病変、再発、腎機能(eGFR)

ならびに治療パターン(寛解導入療法・寛解維持療法それぞれの治療の種類と期間、およびグルココルチコイド(GC)の開始量)

 

Serious Infection(SI)

入院や抗菌薬の静注が必要なものを日和見感染と同様にSIと定義した。
AAV集団では帯状疱疹(HZ)の罹患率が高いことから、入院の必要性にかかわらずHZの全症例をSIとした。

 

Drug exposure

以下の薬剤の曝露期間を患者年で推定した。

・シクロフォスファミド(CYC):寛解導入療法ー初回投与から最終投与3ヶ月後までを曝露期間と設定

・リツキシマブ(RTX):寛解導入療法・寛解維持療法ー初回投与から最終投与6ヶ月後までを曝露期間と設定

・その他の薬剤:寛解維持療法ー初回投与から最終投与を曝露期間と設定

寛解維持療法には初期治療と再燃時の両方が含まれる。

 

Results

Patient characteristics at diagnosis

1990年1月~2020年5月までに受診した患者162名を対象とした。

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51.9%が男性で、平均年齢は 60.9±15.7歳、63%がGPAであった。159人の患者でANCA血清検査が行われ、44%がC-/PR3-ANCA陽性、43.4%がP-/MPO-ANCA陽性、12.6%がANCA陰性だった。診断時の平均BVAS は12.75±6.25で、23人(14.2%)が腎代替療法、10人(6.2%)が血漿交換療法を必要とした。
寛解導入療法として、GC(平均44±15mg)に加えてCYC単剤(61%)、RTX 単剤(18%)、またはそれらの併用(9%)が行われていた。

CYCand/orRTXで治療を受けた患者(n=137)では 74%(n=102)がPCP対する予防投与を受けていた。維持療法でRTX、AZAを投与されている患者は同程度であった。

 

Insidence and type of serious infections

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フォローアップ期間(891.2患者年, 平均期間5.4年)に50人(32%)の患者が67件のSIを発症し、全体の発症率は7.5/100患者年であった。1回目の感染までの期間(中央値)は1.1年だった。同時期の死亡率は9.2%(n=15)であった。感染症のほぼ半数は呼吸器感染症であり(45%)、Table2のようにその他感染症が見られた。感染症発症時のプレドニゾロン1日投与量の中央値は19mgであった。

 

Timing of serious infection

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SIの全体的な発症率と診断後の年による発症率を表3に示す。
ほとんどの感染症(42%)は診断後1年目に発生した。

Risk factors for SI during

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SIを発症した患者(n=50)と発症しなかった患者(n=112)特徴をSuppl.Table 2に示す。 SIを発症した患者は、血漿交換および/または透析による管理を受けている割合が高く、PSLの初期投与量が多く、eGFRが低く、診断時のBVASが高かった。多変量解析では血漿交感および/または透析を受けている患者では受けていない患者に比べて、SIを発症するリスクが5倍高かった。

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Fig1に示すように、診断時の腎機能低下、高齢、血漿交換や透析の必要性といった特定のリスクファクターが、SIの発症に最も大きな影響を与えていた。

 

Risk for SI during exposure to discrete drug regimens

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また、異なる治療段階(寛解導入期、維持期、治療中止期)でのSIリスクにおける様々な免疫抑制剤の寄与の可能性についても評価した。SIの発生率は、導入期が維持期や治療中止期に比べて高かったCYによる寛解導入治療はRTXによる寛解導入治療よりもSI発生リスクが高かった。

維持療法に関しては、様々な免疫抑制剤(AZA、MTX、MMF)を投与した患者/治療を中断した患者と、RTXを投与した患者との間に差はなかった。

 

Discussion

RAVE試験では、SIの発生率はCYC群とRTX群で同程度だったが、より重度の腎疾患患者を対象としたRITUXVAS試験では、RTXと比較してCYCでの発生率がわずかに高くなっていた。

RTXとAZAを2年間投与された場合のSIリスクを比較したRCTデータでは、両群間に有意差は認められなかった(AZA群で:8件/58人、RTX群:11件/57人)。

本研究の強みは、多施設共同研究であること、EGPA患者を除外したことでより均質なコホートとなったこと、長期の追跡調査を行ったこと、疾患のさまざまな局面でのSIの発生率と薬剤曝露の詳細を示したこと。

本研究のlimitationは①レトロスペクティブであるため、SI発生率が過小評価される可能性があること、②参加施設間で事前に規定された統一された治療プロトコルがなかったこと、③追跡期間中のGCの曝露量の合計が不明な例があること、④Vasculitis Damage Index (VDI)のデータが一貫して記録されてはいないこと。

 

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疾患活動性が高い患者でSI発生率が高いのは特に意外ではありませんが、寛解導入期の治療においてはCYとRTXで差がつきました。やはり分子標的薬であるRTXの方が使いやすくこれから主流になるかもしれません。