リウマチ膠原病 論文抄読会

リウマチ膠原病に関する論文を読んでいきます。主に知識量up目的です。初学者ですので間違いがありましたらコメントで教えて頂けると有難いです。

tocilizumabのリウマチ性多発筋痛症に対する効果

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4975852/pdf/annrheumdis-2015-208742.pdf

 

Introduntion:グルココルチコイド(GC)はPMRの治療に使われているが副作用が多い。GCの代替になる薬剤として、TCZの有効性を評価する。

PMR activity score(PMR-AS)は朝のこわばり、上肢挙上、PGA、VAS、CRP(ESRでの代用も可)の5つの項目からなる。PMR-AS<7を低疾患活動性、PMR-AS>17を高疾患活動性と定義している。

発症早期のPMRに対するTCZの有効性および安全性を検証するための、24週間、open-label、前向き縦断研究を施行した。

 

Study design:TCZはbase line、4週後、8週後の3回、8mg/kgで点滴投与された。primary end pointは12週目に評価された。12週目~24週目はPMR-AS≦10であれば0.15mg/kg/dayのPSL投与、それ以外であればPSL:0.3mg/kg/dayの投与を受けた。PMR-ASは4週間毎に評価され、≦10の場合は2週間毎にPSL:1mgずつ減量し、>10の場合は少~中等量増量され、すでに中等量投与されている場合は5mg増量された。

 

Setting and participants:患者はフランスの2つの大学病院でリクルートした。ChuangのPMR基準を満たしていた。過去12ヶ月以内にPMRを発症し、PMR-AS>10の疾患活動性で、PMRに対してGC治療が行われたことがない、もしくはPSL投与は受けていても1ヶ月以内で試験に参加する7日前には中止されていた。

年齢50-80歳、NSAIDsは参加2日前までに中止、ESR≧40mm/h、CRP≧10mg/dlであった。その他のリウマチ・膠原病疾患を疑う所見はなかった。

 

Data collection:毎診察時に患者はVASを記載し、36個のQOLに関するアンケート(SF36)に答えた。GCAを発症していないことを確認された。

B-モードエコー、肩・骨盤部のMRI、PET-CTはbase line、2週間後、12週間後に施行された。

 

Outcomes and followup

primary end point:12週目にPMR-AS<10の患者の割合

secondary end point:2,4,8,12,16,20,24週目のPMR-AS(CRP)とPMR-AS(ESR)の反応性の評価(CRPに対するTCZの反応を排除するためにESRでも評価)

 

Results

Patient characteristics:少なくとも1回のTCZ投与を受けた20人の患者(男:女=13:7)が含まれ、年齢の中央値は66.9歳(62.0〜72.5)、疾患期間の中央値は99日(67〜163)だった。 base line PMR-ASの中央値は36.65(30.45–43.85)だった。18人(90%)の患者は、肩こりと骨盤帯の痛み・朝のこわばりがあり、中央値は180.0(75.0–180.0)分でした。 全身症状は、発熱(2/20人)、> 5%の体重減少(3/20人)、および血清γ-GTPの上昇(9/20人)だった。 リウマチ因子陽性患者や末梢関節炎の患者はいなかった。

 

Efficacy

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すべての患者が12週目にはPMR-AS≦10を達成した。(検査値に比べてVASの低下はどれも緩やかですね。)

 

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PMR-AS≦10の患者は2週目には3人(15%)しかいなかったが、4週目には9人(45%)、8週目には13人(65%)と増加した。最初の12週間でrescue treatmentを必要とした患者は居なかった。(Morning stiffnessは割と順調に改善していますが、VASの改善は個人差が大きいようですね)

すべての患者は12週目に低用量PSL(0.15mg/kg/日)を開始された。 開始用量の中央値は12mg(9.0–12.5)だった。PSLの投与量は16、20、および24週目にプロトコルに従って減量した。 PMR-ASの中央値は12週目(4.50(3.2-6.8))から24週目(0.95(0.4-2.0))と大幅に改善した。 

フォローはPSLの投与が終了してから1年間継続し、24週目以降の中央値12ヶ月(12-17)行われた。2人はフォロー中に脱落した。24週目から6ヶ月後にPSLの投与を受けていたのは4人だった。フォロー終了時のPSL累積投与量は560mg(405-755.25)だった。PSL終了2ヶ月後に中等度の再燃をした人が1人居た。

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症状や血液検査値が改善したのとは対照的に画像検査ではあまり改善が見られなかった。PET-CT・MRIでわずかに改善を認めたものの、エコーでは改善を認めなかった。

 

Discussion:TCZは発症早期のPMRに単独療法として有効かもしれない。すべての患者は12週目までにprimary end pointを達成し、TCZ投与後は少量PSL投与しか必要としなかった。85%の患者は12週目までに低疾患活動性を達成した。secondary end pointもすべて改善した。TCZの効果は緩徐かもしれない。しかし最近行われたACR/EULAR の研究では125人のPMR患者をPSLのみで治療して、4週目までに完全な反応を示したのは71%に過ぎなかった。

この研究の限界はランダム化試験ではないこと、PMR-ASにCRPが含まれることである。

 

感想:PMRにTCZが有効であると数年前から言われていますが、どの時点で間隔延長・休薬するのかなど不明な点が多いですね。この論文ではPSL投与せずにTCZ開始されている症例もあるようですが、金銭的な問題を考えるとなかなか難しいかもしれません。ただし、PSLの副作用をなるべく回避したい症例では早期からの投与も考慮されるでしょう。