セクキヌマブとアダリムマブのPsAに対する効果(EXCEED study)
Lancet 2020;395:1496-505
Introduction:乾癬性関節炎(PsA)の臨床像は不均一であり、関節炎・脊椎炎・腱付着部炎、皮膚および爪の炎症などの皮膚・筋骨格系の症状を引き起こす。NSAIDsはPsA治療のfirst choiceであるが、心血管イベントや消化器障害を引き起こす可能性がある。皮膚病変や筋骨格系の炎症を抑えるためMTXなどのcsDMARDsが使用されている。
生物学的製剤(bDMARDs)はcsDMARDsでは効果不十分な患者に使用されています。ADA(adalimumab)は単剤/もしくはMTX併用でPsAに対して幅広く使用されている。SCK(secukinumab)はIL-17A阻害薬で、PsAの症状やX線での骨病変の進行、身体機能などを改善させることが分かっている。中等度~重度のPsAの患者において、ETNやUSTよりも優れた効果を示した。
EULARは治療アルゴリズムを提唱しているのに対し、GRAPPAは別の臨床アプローチを提案している。csDMARDsの効果が不十分な場合にどのbDMARDsを使用すべきかに関する臨床試験は少ない。
IL-17A阻害薬中等度~重症の乾癬患者の皮膚症状・乾癬性関節炎の患者に対する有効性が有効性が示されている。しかし筋骨格系症状に対する薬剤の効果を比較したデータが欠けている。
EXCEED studyはbDMARDsのfirst choiceとして、SCK:300mg単剤療法がADA:40mg単剤療法に比べて優れているかを比較したものである。ACR20の達成率をエンドポイントとして比較した。
Methods
Study design and participants:EXCEED studyは、ランダム化・二重盲検試験で、実薬対照試験、phase 3b、多施設(26か国で168ヶ所)、52週間の2グループ比較研究である。乾癬性関節炎および乾癬に対して生物学的製剤の投与を受けたことがない患者、およびcsDMARDに対して不耐性または不十分な反応を示した患者に対するSCK単剤療法とADA単剤療法を施行した。
18歳以上、PsA criteriaを満たす、活動性のPsA(腫脹関節3つ以上・圧痛関節3つ以上)、少なくとも1つ以上で2cm以上の乾癬のプラーク、爪病変)があり、bio使用歴がなく、csDMARDsに耐性/忍容性がない患者を選んだ。
MTXを含むcsDMARDsは4週間前に中止、レフルノミドは8週間前に中止した。ステロイドを併用している場合はPSLもしくはPSL換算で10mg/day以下を少なくとも2週間以上使用している患者を選定した。
妊娠、感染症または悪性腫瘍、生物学的製剤またはオピオイドの使用歴、経口または局所のレチノイド継続使用、光線化学療法、光線療法、または局所治療を受けている患者を除外した。
Randomisation amd masking:8週間のスクリーニング期間後、ADA群とSCK群に割り付けた。
Procedure:SCK:300mgは0,2,3,4週、以降4週ごとに48週まで投与した。ADA:40mgは2週ごとに50週まで投与した。主要な有効性の評価はスクリーニングの時点と、baseline、2週目、4週目、以降4週ごとに52週まで行われた。337853人(40%)がプロトコルを逸脱していた。そのうち172人はSCK群で、165人はADA群であった。プトロコル逸脱の主な理由は使用が禁止されている薬剤を使用したことであった。
Outcomes:primary outcomeは52週目時点でのACR20達成率
secondary endpointはPASI90、ACR50達成率、HAQ-DIのbaselineからの変化、LEI criteriaに基づく腱付着部炎の改善とした。
exploratory endpointは52週目時点での筋骨格系や皮膚の評価を行った。ACR20とPASI100を組み合わせて評価し、PASI70/100の達成率、PASI score:3以下、ACR70達成率、SPARCC criteriaに基づく指炎や腱付着部炎の改善率、PASDASにおける低疾患活動性の達成率、DAPSAにおける低疾患活動性や寛解の達成率、HAQ-DIにおける超低疾患活動性の達成率などを評価した。
primary efficacy endpointはACR20達成率、50週または最後の診察までにADA/SCKの投与を終了できていること、MTXを含むcsDMARDsの使用を36週目以降やめられていること、と設定した。
Role of the funding source:この研究はノバルティスによる資金提供を受けている。
Results:試験は2017/3-2018/8まで行われた。Figure.1の通り426人がSCK群、427人がADA群に含まれた。試験を完遂したのは709/853(83%)であった。SCK群の61/426人(14%)、ADA群の101/427人(24%)が52週までに治療を中止された。中止の主な理由は有害事象、効果不十分などであった。baselineの患者構成はSCK群とADA群で類似していた。
SCK群の357/426(84%)、ADA群の371/427(87%)が以前にMTXの投与を受けていた。primary endpointである、52週時点でのACR20の達成率はSCK群で67%、ADA群で62%とSCK群の優位性は示せなかった。
ACR50とPACI100を併せた評価では、SCK群の優位性が示された。PACI75/100、absolute PACI score≦3、低疾患活動性スコア、DAPSA、PASDASなども優位性を示した。
211/853人(25%)の患者が、体表面積の10%を超えるもしくはPACI≧10の乾癬を患っていた。治療に関連した有害事象はSCK群の患者330/426(77%)、ADA群の患者338/427(79%)人に発生した。
心血管イベントの副作用はSCK群で2人(1人は生活習慣病、心血管疾患のためステント挿入歴があり、もう1人は喫煙者であり、高血圧や心筋虚血の既往あり)発生した。ADA群では心不全のため入院を要した患者が1人居た。
IBDを発症した患者はSCK群で2人居た。大腸がんで死亡した症例がSCK群に1人居た。
Discussion:この研究では単剤投与だが、一般的にPsAの治療ではMTXが併用されることが多いので、結果を一般化するには限界がある。X線での骨病変の進行抑制に関しては評価していないが、今後評価すべきだろう。SCKは52週時点でのACR20の達成率に関してはADAと比較して優位性を示せなかったが、筋骨格系や皮膚病変のスコアを改善させ、高い臨床効果を提供した。
SCKが明らかに優位とまではいきませんでしたが、皮膚病変の改善率はやや上回っていました。